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自然を楽しむ新たな地域の子育ての形。「森のようちえん」が実現するまでの軌跡 ~「森の寺子屋」のプレイヤー多田はるひさんのチャレンジ~

こんにちは佐藤将平です。
前回は過去の「森の寺子屋」のプレイヤーである佐藤飛鳥さんのインタビュー記事を掲載しました。佐藤飛鳥さんがどのような想いで「森の寺子屋」に参加し、どのようなチャレンジを行ったのかご紹介させていただきました。
佐藤飛鳥さんのインタビュー記事はこちら

 前回に引き続き過去の「森の寺子屋」プレイヤーをご紹介します。今回は多田はるひさんをご紹介します。
多田さんは「森の寺子屋」を通し、「森のようちえん(※)」の運営を自身のチャレンジとして進めました。
「森の寺子屋」で得たヒントを基に、2019年から下川町内で「森のようちえん カカラ」をスタート。現在は週1回町内全域をフィールドにその時々の自然の中での遊びを親子や地域の仲間と一緒に楽しんでいます。
 なぜ多田さんが「森のようちえん」を進めていこうと感じていたのか、どのような経緯で「森のようちえん」が進んでいったのか、インタビューを通し語っていただいたことをご紹介させていただきます。
(※)「森のようちえん」
自然体験を基軸とした子育て・保育・乳児幼少共育の総称。
森だけでなく海、川、野山、里山、畑、都市公園など広義にとらえた自然体験をするフィールドをさし、各々の地域の特色を活かした活動されている方が多い。

人物紹介

多田はるひさん
2018年に東京から下川町へ移住。第1期「森の寺子屋」に参加し、「森のようちえん」の運営を志す。「森の寺子屋」の活動を通して得た様々なヒントから、2019年より「森のようちえん カカラ」をスタートする。

「森のようちえん」を行いたいと思ったきっかけはなんだったのですか
「きっかけは3.11でした。当時栃木県に住んでいて3.11が発生によりライフラインが途絶えたとき、私ってなにもできないなって生きる力が足りていないことを実感して不安感を抱いたんです。このとき、改めて生きるということを考え直すようになり、地球や人間にとってよりよい暮らしがしたいという想いを抱くようになったんです。それがきっかけでパーマカルチャー(※)に魅了されるようになって、自然と調和して人とのつながりを意識しながら生きていく方法を実践したいなと強く感じました。実はこの段階ではまだ具体的に森のようちえんを進めたいと思っていたわけではなかったんです。その手段のひとつとして「森のようちえん」もあるなと思っていたくらいでした。」
※パーマカルチャー
地球へ配慮すること、人を大切にすること、自然を大切にすることをコンセプトとし、人と自然が共に豊かになるような関係を築いていくためのデザイン手法

森の寺子屋に参加されたきっかけは何だったのですか
「想いは抱いていたのですが、どうすれば形にできるのか固めることができず、なかなか前に進むことができませんでした。移住して間もなくて一緒に進める仲間もおらず想いを形にすることの難しさを強く感じていました。
そんなときにチャレンジを応援する森の寺子屋の存在を知り、やりたかったことを形にできるのではないかなと思って参加を決意しました。」

「森の寺子屋」を通し,どのような経緯でご自身のチャレンジが実現までたどり着いたのですか
「森の寺子屋で、私の想いを発表したところ、森の寺子屋参加者の中に知人が森のようちえんをを運営している人がいて、その人を紹介してもらうことができました。その人に会いに行って実際に森のようちえんに参加したり、お話を聞いているうちにこういう機会が下川町にもあったらいいなあと感じました。
 今までは私の想いを実践する方法の一つとして森のようちえんを考えていたんですけど、この出会いがきっかけで、具体的に森のようちえんをやっていきたいと感じるようになったんです。
森のようちえんは全国にもたくさんあって、それぞれに特色のある取組みをしているので、2018年の11月に鳥取県で開催された森のようちえん全国フォーラムに参加させていただいて、全国の森のようちえんについて学ばせていただきました。
 その後は、下川町で森のようちえんを行うにあたって、みなさんに森のようちえんを知ってほしくて、森のようちえんとはどんなものか、全国フォーラムで気づいたこと、森のようちえんでやりたいことなどお話させていただく「おはなし会」を町内で開催しました。たくさんの方々にご参加いただいて、この場で森のようちえんに共感していただいた方が後に一緒に森のようちえんを運営する仲間になりました。
 今はまだまだ手探りで進めていますが、町内全域をフィールドに、春はお花見をしたり、森林がきれいな時期には森あるきをしたり、冬には雪遊びをしたり、季節や自然をいっぱい感じることのできる遊びを楽しんでいます。」

活動風景

▲「森のようちえん カカラ」活動風景①

お話会

▲下川町内で開催された「お話会」の様子

森のようちえんを運営するにあたってどのようなことを大切していますか
「まずひとつは、自由さを大切にしていきたいです。かっちりしたプログラムを組んで行うのではなくて、自由にのびのびと自然を楽しんでほしいと思っています。対話の場をつくって、話し合いの中で、こういう遊びも楽しいよね、こういうことやっていこうというようなその場、その状況で柔軟に遊びが広がっていければいいなと思っているんです。
 そして、様々な出会いやつながりも大切にしていきたいです。活動の中では、あえて街中で行うこともあるんです。それは、たくさんの人の目に触れてほしくて、そこから大人も子どもも新たな出会いが生まれて、つながりができればうれしいなって思っているんです。特定の人だけで進めるのではなくて、ゆくゆくは地域のみんなでみんなの子どもを見守る町であってほしいなって思っています。森のようちえんがそのきっかけになればうれしいです。そうなれば子どもたちにとっても親御さんにとっても安心して暮らせる町になるんじゃないかなって思います。」

活動風景②

▲「森のようちえん カカラ」活動風景②

活動風景③

▲「森のようちえん カカラ」活動風景③

「森の寺子屋」参加して良かったことは何ですか
「私の想いを発表したところ、他地域の森のようちえんの運営者を紹介してもらい、私一人ではたどり着くことができなかったつながりや仲間に出会えました。移住して間もなくて頼れる仲間がいない状態でしたので、とてもうれしかったです。森の寺子屋を通して出会った様々な方々から私が思いつかなかったようなアイデアやアドバイスももらえたことで、自分のやりたかったことがどんどん明確になっていきました。
 森の寺子屋では、次回までに~していくという目標をたてるので、毎回具体的な行動の目標を立てることができましたし、自分で立てる目標に向けたちいさな実践の積み重ね一つひとつが自分への信頼となり前を向いて進めたように思います。」

ブレスト

▲「森の寺子屋」の活動:ブレスト(アイデアの出し合い)の場

 多田さんは「森の寺子屋」を通し、自身の想いを「森のようちえん」として実現しました。
様々なアドバイスやつながりが実現へのカギであった多田さんは言います。
 地域みんなで子どもを見守るという、つながりが広がることを大切にする多田さんの今後の活動にも期待ですね!