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宿をやること、知ってもらい、助けてもらう~森の寺子屋2020メンバーインタビュー|大石陽介さん~

 2020年、約半年間、進めてきた月1勉強会「森の寺子屋」。

 毎期の最終回では、全6回を終えたら、町内の方や町外の協力者をお招きして、寺子屋メンバーがどんなことに挑戦し、どういう協力を必要としているのかを発表する場を設けてきました。

 しかし、コロナ禍で人が集まる催しを実施するのはむずかしいのが現状。

そこで、寺子屋3期目のメンバーが、半年どんなことにチャレンジし、今後どんな動きを進める予定なのかを、一人ずつ取材して、ご紹介します。

 この記事では、起業型の地域おこし協力隊「シモカワベアーズ」2019年度着任の、大石陽介さんをご紹介します。

小学校教員や青年海外協力隊を経て下川へ

 下川に移住したのは2020年の3月末。ここに来る前は、知床に住んでました。静岡出身で、北海道に移り住む前は、小学校の教員を8年間勤めたり、青年海外協力隊としてモンゴルで2年間活動したりしていました。
 
 小さい頃からずっとやりたいと思っていたことが、3つあって。

 ひとつは、子どもと関わる仕事。教員になったのは、そのためです。

 ふたつ目は、発展途上国で何ができるのかを知りたかった。子どもの頃に見た、アフリカのどこかの国で井戸を掘りあてて喜んでいる人たちの映像が、ずっと忘れられなくて。

 また、学生のときにカンボジアに行ったときに出会った男の子が、中高大と8年間の英語教育を受けてきた自分よりも、学校に通えていないにも関わらず英語がペラペラで衝撃を受けました。

 自分の力で生きていくことって、こういうことなんだなと気付かされて。こうした記憶や驚きがあったから、青年海外協力隊として発展途上国に暮らす子どもたちのために何か力になれればと思ったんです。

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モンゴルでの様子。2枚の写真提供:大石さん

 都市部ではない地域で暮らしている海外の人々のようすを見ながら「日本の地域はどんなことに困っているんだろう?」と興味がわいて。

自分にできることが何かを知りたくて、恩返しをしたいと思い、ローカルに目を向けるようになりました。

 そしてやりたいこと3つのうちの最後が、宿をやることです。
 
泊まりに行くのも、新しいところへ行くのも好きだったんですけど、いつかは自分も宿をやりたいな、と。

北海道を選んだのは、日本の地域で何が課題なのかを自分の目で見てみたかったからなのと、妻の実家が道内だったから。あとは、土地がいっぱいあるからですね(笑)。

 また行きたいと思う地域はたくさんあるんですけど、下川は本当に何度も訪れることができたから「この町、何かあるのかも」と思って。最初に住んだ知床から、下川に引っ越しました。

 移住するときは、起業型地域おこし協力隊「シモカワベアーズ」に着任しました。起業を伴走支援してくれる制度で、この枠組みがあったのも、下川に住むことにした決め手の一つですね。

 ずっとやりたいと思っていた宿泊業もできるし、あとは同業の方が応援してくれるんです。ふつう、すでに宿泊施設を運営している人は、新しく宿をやりたい人が来たら嫌がるかと思うんです。

でもすごくいろんな情報をくれたり、応援してくれるから、すごいなあと思います。

オープン準備中のお宿

 いま考えているのは、Aフレームと呼ばれるデザインの一棟貸しキャビン。ロケーションを変えられるように、コンパクトな宿泊施設になりそうです。今は材料を集めて、設計を考えたり、最初のロケーションを探したりしています。
 
 それから、宿業を始める前段階として、これからの自分のお客さまになる人と知り合ったり、ニーズをヒアリングしたりする目的も兼ねて、0円で町内を案内する「ぐるっとしもかわ」というオーダーメイドツアーを企画しました。

 このツアーも、本格的に宿をオープンしたら併せて提案したいと思っていて、お客さまは着替えだけ持って来ればOKの、いろいろこちらで手配ができるようなものを考えています。

 プライベートを確保しつつゆっくりもできるし、「せっかく下川に来たからには、ここでできることをやってみたい」という要望にも応えられるようにしたいですね。

「森の寺子屋」を通して得られたつながり

 「森の寺子屋」に参加したのは、自分が何をやろうとしているかを町内の方に知っていただきたかったから。あとは、一人でできないことに対して応援していただいたり、協力をもらえないかと思ったからでした。

 中間発表会では、町内のいろんな方が来てくれたし、寺子屋メンバーで話し合う中でも、毎回、新しい視点をもらえました。

それから、寺子屋での活動を毎回町内の広報に掲載していたから、初めましての人でも、「広報見たよ」と声をかけていただくことがありましたね

 退職した方や、林業に携わっている方など、ふだんの生活ではなかなか接点が持てない方とも、もっとつながれたら、とは思いました。コロナのこともあるので、むずかしい部分はありますが。
 
 今はAフレームの宿を作るための作業場兼倉庫を町内の方にご紹介いただいて、とある農家さんに、貸していただきました。除雪もていねいにしてくれているし、自由に使わせてもらえるので、すごく助かっています。

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 宿を作る木材も、定価より安く譲ってもらえたりとか。宿自体は移動ができるようにしたいのですが、そのための吊り方や重量などの計算も、同じベアーズの1期生である山田さんに手伝ってもらったり。

 町外の方では、世界各国でAフレームを学び、Aフレーム専門の建築士の方に、オンラインでアドバイスをもらったり、わからないことを相談したりしています。 

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 今後の予定としては、夏にはオープンして、お客様を受け入れられるようにしたいと思っています。大人2人くらいが泊まれる間取りで、電気はソーラーの蓄電池を使っていただく予定です。

 Aフレームの宿を設置する前にも、町内の方や「ぐるっとしもかわ」でご案内した方々に、ワークショップ形式で作業を手伝っていただけたらと思っています。自分が関わると、他人事ではない宿として感じてもらえるかなって。

 あとは、コロナ禍で一つの事業だけで食べていくのがむずかしいなと感じるようになったので、協力隊の任期が終わる2年後までに、別の柱になる事業も考えたいと思っています。

やったことがないことばかりだけど、意外とできるんだなって思いますね。

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Aと大石さん

過去の「森の寺子屋」の活動



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