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エゾシカでまちおこしを~森の寺子屋2020メンバーインタビュー 山田泰生さん~

2020年、約半年間、進めてきた月1勉強会「森の寺子屋」。

毎期の最終回では、全6回を終えたら、町内の方や町外の協力者をお招きして、寺子屋メンバーがどんなことに挑戦し、どういう協力を必要としているのかを発表する場を設けてきました。

 しかし、コロナ禍で人が集まる催しを実施するのはむずかしいのが現状。そこで、寺子屋3期目のメンバーが、半年どんなことにチャレンジし、今後どんな動きを進める予定なのかを、一人ずつ取材して、ご紹介します。

 この記事では、起業型の地域おこし協力隊「シモカワベアーズ」2017年度着任の、山田泰生さんをご紹介します。

森の寺子屋のテーマを教えてください!

 森の寺子屋は取組みが始まった1期(2018年)から毎年参加していて、今回が3回目となりました。3期とも、森の寺子屋で取り組んだテーマは「エゾシカを下川町の新たな特産品とし、まちおこしをしたい」というものです。

 エゾシカを狩猟した場合、食用にできるのは肉部分であり、全重量のわずか3分の1程度で、残りの内臓、皮、骨は食用に適さず、食用のみの利活用では廃棄することになります。そこで今回はエゾシカの食肉以外の活用法も試したいと考えました。

シカの写真

1~3期までの活動について聞かせてください

 まず1期目では、プロシュート(生ハム)の加工、2期目では、エゾシカの肉で作った醤油である肉醤(ししびしお)の試作を行いました。

 そして、今回の3期目では鹿皮の鞣(なめ)しに挑戦しました。鞣しには「タンニン鞣し」という手法を用いました。一般にはタンニンは購入するものなのですが、今回はタンニンも地元産にこだわり、下川町のカラマツとトドマツのおがくずを煮込んで抽出することにしました。

 今回挑戦して分かったのは、おがくずからタンニンの抽出には、大変な労力が必要であることです。そのため、今期はタンニン抽出作業を途中で終わり、鞣しまで至りませんでした。しかし、今期、タンニン抽出作業を省いて鞣す方法を学んできましたので、来年度以降、新たな方法で試そうと考えています。

森の寺子屋に参加してみてどうでしたか

 1~3期を通して、森の寺子屋に参加して良かったなと感じたのは、様々な方と話すことにより、専門的な情報を得られたことです。

 特に1期目では、生ハムの製造に関して、オブザーバーで参加していた北海道立総合研究機構(道総研)の方から、帯広畜産大学の教授をご紹介いただき、そこで生ハム製造の研修を受けさせてもらえました。

 また、プロシュートの熟成場所については、第1期に参加していたサンルダム※の関係者にお話を伺うことができ、それがきっかけとなり、ダムの堤体をお借りして熟成実験ができることになりました。

 プロシュートの製造は、これから事業化しようとしてますが、森の寺子屋に参加していなければ、試作することすら難しかったと思います。

 2期目、3期目でも引き続き道総研の方々にお世話になりました。2期目の肉醤づくりでは、食品加工研究センターの方を紹介してもらい肉醤の製造方法を、そして3期目の鹿革の鞣しでは、林産試験場の方にタンニンが抽出しやすい樹種を教えていただきました。

 1~3期で挑戦した取組みは、いずれも専門的な知識が必要になる部分があり、そのたびに様々な方に助けていただきました。自分で調べて悩むより、専門の方から的確なアドバイスをいただけたことにより、試行錯誤の回数が少なく済み、早く成果につながったと感じています。

※サンルダム:下川町にあるダムの名称。2018年度に完成

プロシュート

プロシュートの加工作業風景

プロシュート試作品

プロシュート試作品

今後考えていることはありますか?

 「シモカワベアーズ」として3年間、鹿肉の利活用に取組み、2月で卒業となります。

 今後は、第一期の森の寺子屋で取り組んだ、鹿肉のプロシュートの事業化を目指し、プロシュートの試作や、加工する工場の設計を進めていく予定です。また、他の熟成食品であるドライソーセージの試作にも着手しようかと考えています。
 
 並行して、肉のほかに加工できる部分に関しても調査と試作を進めていく予定です。
そのひとつとして、内臓の缶詰を試作しています。まだ試作品ですが、確実に安全が保障されれば商品として販売することも視野に入れています。
そのほか、骨や角などの使い方も考えていきたいですね。

最後に一言お願いします!

 2月でベアーズを卒業し、今はプロシュートの事業化に向け準備を進めています。プロシュートは再来年、ドライソーセージはうまく進めば来年度末の販売を目指しています。商品ができた際は、ぜひ購入して応援いただけると嬉しいです。

(文:佐藤 大樹)

山田さん①

過去の森の寺子屋の活動