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森と暮らしのつながりに気づく 下川町の森林環境教育


ぐるーっと見渡すかぎり緑!緑!緑!な下川町。

下川町では暮らしのそばに森林があります。
仕事、資源、エネルギー、遊び場、心のやすらぎ──
森林はさまざまな恵みを町民にもたらしてくれています。

はじめまして!下川町の教育委員会でインターンをさせていただいている、
大学3年生の齋藤希空です。今回は、小学6年生の「森林環境教育」の授業を、下川町インターン生の目線からお届けします!


下川町オリジナルの「森林環境教育」

森林と生きている下川町では“子どもの教育の場”にも森林が活かされています。
森林環境教育は、NPO法人森の生活が町から委託をうけて実施しています。


日本は国土の約7割が森林の、自然豊かな「森林(もり)の島」。
国土面積に占める森林の割合は、先進国でも上位に入ります。

しかし、時代が進むにつれて森林に触れる機会はどんどん減ってきています。
自然に囲まれた田舎の子どもでもなかなか森林に遊びにはいきません。
それは下川町でも同じです。

学校教育は子どもたちみんなが参加します。だからこそ、森林の大切さや地域の資源を知るとてもいい機会です。授業を受けて森林の価値に気づき、地域に誇りをもってくれる子どもが増えてほしい。

人間と自然は一体。

そう考えているからこそ、森林を理解して大切にしようという気持ちを育んでいきたい、とNPO法人森の生活の麻生さんは話してくださいました。

下川町森林環境教育の目標3つ
・身近な自然における学びや楽しみを通じて人間的な成長を育む。
・地域の資源である森林を活かす仕事について理解を深める。
・森林の役割や地域の取り組みについて考え、持続可能な社会に向けて自ら行動できる人を育む。

驚くべきなのは、町内の幼稚園、小・中・高校で15年間一貫しているところ!
発達段階に合わせて、森林とのふれあい、学び、課題解決の順にステップアップし、現体験を通して学びを深めていくシステムがつくられています。

森林を知ることはもちろん、森林を学びの場として子どもの心を育て、自分で考える力を伸ばしたいという思いがあります。森林に関わる人、環境にやさしい暮らしをしている人の話を聞き、実際に森林に行って五感をフルに働かせる。そうすることで子どもたちの森林への興味を引き出し、次世代へのバトンをつなげたいと考えています。

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授業レポート
小学校6年生の総合の時間、森林環境教育の授業におじゃましました!
今年のテーマは「気候変動と森林」。
本格的な森林環境教育の前に、まずは「住みやすい町ってどんなまち?」を考えました。

思いついたアイデアは一個ずつ付箋に書いて大きな紙にはっていきます。
便利なまち、豊かなまち、きれいなまち、安全なまち…。
どんどん付箋が減っていく!すごい!

その後は、みんなで話し合いながら意見をグループ分けして、
ファシリテーターの先生が「便利って?きれいにするには?」と子どもたちの意見を深掘りします。

「大型ショッピングセンターがあったらいいよ!」
「でもそしたら木を切らないといけないよ」「便利にはなるけど…本当に住みやすいのかな」

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みんな思い思いに発言して、たまには意見がぶつかることも。


そしてここから、森林環境教育がスタート。

① 事前学習
下川町版SDGsと地球温暖化について学びました。

2018年にSDGs未来都市に選定された下川町ですが、
過去に何度か町の存続が危ぶまれることがありました。
下川町を持続可能な町にするためにはどうしたらいいか──
考えたときにツールとして使ったのがSDGs(持続可能な開発目標)でした。

下川町版SDGsに興味がある方はこちらをチェック!
具体的なゴールや取り組み、つくられた経緯がわかりやすくまとめられています。
https://shimokawa-town.note.jp/n/ndbae1f6a2cee?magazine_key=m46bad2d6d1b9#tGl5W

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「SDGsって知ってる?」の問いかけから授業がはじまります。
すると子どもたちは「持続可能な開発目標!!」と大きな声で。
なかには「Sustainable Development Goals」という声も…。びっくり!

毎年の森林環境教育の成果といえばそれまでですが、
子どもたちが自分の住む町のことを知っているから、「自分ごと」として考えているからだと思います。
本当にすごい。見習わなければ、と考えさせられました。


② 現地学習
馬を飼っている小峰博之さん、自転車のある生活をしている普久原涼太さん、暮らしの中で工夫している瀬川聖子さん。下川町で暮らす3人のゲストからお話していただきました。

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小峰さん

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普久原さん

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瀬川さん

下川の町で暮らす人たちの理想や課題、その課題を解決するためにどんな活動をしているのか…などなど。
熱い思いを語ってくださり、子どもたちもお話に惹きつけられている様子でした。


個人的に心に残ったことば
・人が生きるために必要なものは森林が育んでくれる
・環境にやさしい=自分にやさしい
・便利で楽な方がいいけど…世界に住む全員が楽なことはないよね
・自分→家族→誰か→世界へ楽しさや笑顔が伝わっていく
・自分が買ったモノの背景を想像したことはある?
・誰かの笑顔を想像して選ぼう

地球温暖化が進んでいて、貧しい暮らしをしている人や産業の犠牲になっている動物がいるとは知っているけれど、実際に行動に起こすまではいかなくて。
だからこそ、環境に人に動物にやさしい生活を心がけている方々のお話にはっとさせられました。

「あなたにもできるよ」
このメッセージを大切に、できることからはじめてみよう。そう思えたお話でした。

③ 事後学習
地球温暖化、SDGsの学び、ゲストの方々のお話をふまえて
もう一度「住みやすいまち」を考えました。

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一番最初の授業で考えた「住みやすいまち」は、便利、きれい、楽しいまちのように、ふわっとした抽象的な理想像でしたが、まとめの時間ででた意見はずっと具体的でした。

エネルギーを最小限かつCO₂を排出しない。自然・木を活かす。古くからの文化と新しい技術を大切にする。などなど。
子どもたちが学んだ知識を吸収して、自分なりに考えてくれたことが伝わってきました。

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今回は、下川町の森林環境教育、小学6年生の授業をレポートしました。

Q. 環境や自分が住んでいるまちのことを「自分ごと」と捉え、どうするべきか、なにができるか考えて生活していますか?
A. いいえ。
こう答える人のほうが多いでしょう。

日本に住んでいると食べ物・水にこまったり、命の危険を感じることはなかなかありません。
ぬくぬくとした環境で過ごしているので、「このままでは自然が失われる!何かしないと!」なんて思いもしません。

だから難しい。

大人でもあまりできていないことを子どもたちに伝えて、考えてもらうにはどうしたらいいのか。授業に参加させていただきながら、そんなことを考えていました。

それでも、子どもたちは彼らなりに「住みやすいまち」を考えていて、
「下川の自然はずっと残したいなあ」「環境にやさしいものを選ぶことならできそう!」
という声も。
森林環境教育での学びは伝えたいことすべてではなくとも、子どもたちに響いているんだな、とじんわりあったかい気持ちになりました。

近くて遠い森に少しでも歩み寄ってくれたら。
森林と子どもたちの距離が近づき、お互いのつながりに気づいてくれたら。
そんな思いが、森林環境教育にはあると感じます。


【下川町教育委員会 インターン生 齋藤希空】

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